買うときに知っておきたいこと
相場、物件選び、契約、計画資金、入居後のアフターサービスまで。
不動産を買うときに必要な基礎知識をまとめました。
10 - 3 入居後の物件の欠陥をめぐるトラブル対応
住まいを購入した後に、物件の欠陥をめぐるトラブルが発生することがあります。
このようなトラブルにしっかりと対応するためには、売買契約の内容をよく理解しておくとともに、関連する法制度、保険、アフターサービス、保証制度などの内容を知っておくことが重要です。
「契約不適合責任」の意味と期間
購入した住まいに、雨漏りや建物の白アリによる腐食などのような物件の欠陥があった場合のことを、従来は「瑕疵」(かし)と言い、それについての売主の責任のことを「瑕疵担保責任」と言っていました。しかし、この責任については、令和2年4月1日に施行された民法の改正により、その責任の名称だけでなく内容も大きく変わりました。改正民法は、まず売主には、売買の対象物件について「種類、品質、数量」に関して、契約の内容に適合した物件を引き渡す義務があるという前提で、もしそれらについて契約の内容に適合しない物件を引渡した場合は、売主の債務不履行責任になるということです。例えば、雨漏りや、白アリなどによる腐食のある建物を引渡した場合は、品質に関して契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務の債務不履行だということです。
契約の対象物(目的物)に、このような不適合があったときには、買主は、その補修の請求ができ、補修請求をしても売主がやらないとき、または補修自体が無理なときなどには、売買代金の減額請求ができます。また、一般的な債務不履行の原則により、損害賠償請求もできますし、契約の解除もできます。ただし、損害賠償は、売主に何らかの責任がない場合はできません。また解除は、その不適合が「軽微」なときにはできないことになっています。
そして、売主がこの責任を負わなければならない期間について、民法は、契約不適合責任を売主が長期間負うのは酷と考え、また売買から生ずるこのような紛争をできるだけ早期に解決することが適切として、買主はその不適合を知った時から1年以内に売主に通知しなければならないこととしています。
この民法の規定は、任意規定と言って、任意に変更・修正ができる規定であるため、当事者間の特約で別の定め(特約)をすることができます。特に既存住宅(中古住宅)の場合は、経年劣化・自然損耗等により、ある結果等の事がらが契約不適合に当たるかどうかの判断が非常に困難か、または不可能のため一般の取引においては、売主が責任を負う範囲を規定したり、責任を負う期間を短縮したりしています。また、場合によっては、売主は一切責任を負わないという特約もあります。その場合でも、売主はその不適合を知りながら買主に告げなかったときには、責任を免れませんが、そうでない以上、特約どおり免責されます。
契約不適合責任については、「9-1売買契約の基礎知識」を参照
宅建業者が売主で、買主が宅建業者でない場合の契約不適合責任については、宅地建物取引業法により、引渡しの日から2年以内に売主が通知を受けた場合に限り、契約不適合責任を負う旨の特約は有効ですが、その通知期間以外に例えば「補修の請求に限る」とか「契約の解除は売主が認めた場合にできる」というような民法の規定より買主に不利な特約は無効です。
不動産会社でなくても会社などの法人は、すべて消費者契約法という法律上「事業者」ですが、事業者が売主となって、消費者に売る契約において、「事業者は契約不適合責任を負わない」という契約条項は、同法によって、無効とされています。
新築住宅の場合は、以下のような法律で買い主を保護しています。
売り主が倒産していたり、売り主に損害金を支払う資力がない場合でも、保険金や保証金の還付により必要な費用が支払われます。
※同法は、民法改正後も、契約不適合のことを「瑕疵」と呼ぶことにしています。
住宅瑕疵担保履行法により、平成21年10月1日以降に引き渡される新築住宅の売り主等には、確実に瑕疵担保責任を負うことができるように「保険への加入」または「保証金の供託」が義務づけられています。これは、売り主が、倒産などによって瑕疵担保責任を負うことができなくなった場合でも、保険やあらかじめ供託された保証金により、消費者に対する瑕疵担保責任を履行するという制度です。
※同法も、民法改正後も、契約不適合のことを「瑕疵」と呼ぶことにしています。
中古住宅の場合は、新築住宅のような制度はありませんので、売り主の瑕疵担保責任については、契約に基づく対応がベースとなります。宅地建物取引業者である不動産会社が売り主の場合は、少なくとも一定期間は契約不適合責任を負いますが、不動産会社が倒産などをした場合、修補等を求めることができない可能性が高 くなります。また、売り主が個人の場合は、契約不適合責任を負う期間を短くする契約が多く見受けられます。
したがって、中古物件の場合は、契約前に物件を十分に確認して、欠陥をあらかじめ把握することが重要です。
このため、最近は、宅地建物取引業法の改正の影響もあり、インスペクション(建物状況調査)を依頼して(「5‐5現地見学時のチェックポイント」ホームインスペクション参照)、建物の状況を事前に確認するケースが増えています。
アフターサービスについて理解する
新築住宅※では、契約不適合責任とは別に、売主である業者が一定の不具合を無償で補修するアフターサービスを任意で実施している場合があります。アフターサービスの対象となる不具合の種類やサービスの期間などについては、会社ごとに基準が設けられています。
たとえば、基本構造部分にかかわる雨漏りや漏水、構造強度に影響する亀裂や破損などは品確法と同じ10年、壁の破損や設備の作動不良などは2~5年の期間 を設けることが多いようです。最近では、アフターサービス期間が10年を超える新築住宅もありますので、アフターサービス制度の有無やその内容について、 しっかりと確認しておきましょう。
※中古住宅の場合でも、一部の仲介会社で、一定の不具合を補修するなど独自のアフターサービスを実施している場合があります。不動産会社を選ぶ際に、保証の有無について確認しておきましょう。
なお、新築住宅内の付帯設備に消費生活用品製品安全法に規定する特定保守製品がある場合は、引き渡しを受けた後速やかにメーカー等に所有者情報の登録を行いましょう。
中古住宅の場合も、引き継いだ付帯設備に消費生活用品製品安全法に規定する特定保守製品がある場合は、メーカー等に所有者情報の提供や変更を行いましょう。点検通知やリコールなど製品安全に関するお知らせを受け取れます。
消費生活用品製品安全法に規定する特定保守製品についての詳細は、「国土交通省・最新の動きvol.12」を参照
契約不適合責任とアフターサービスの違い
契約不適合責任は法律で定められた責任であり、アフターサービスはあくまでも消費者サービスの一環として、不動産会社などが自主的に実施しているものです。いずれも消費者保護を目的としている点では共通していますが、責任の対象や期間などが違っている点に注意が必要です。
契約不適合責任の対象になるのは、「取引時における物件の契約との不適合」に限られ、一般的に、売り主が責任を負う期間は契約で定められています。また、品確法では新築住宅について、構造耐力上主要な部分などに瑕疵があった場合、引き渡しから10年間の瑕疵担保責任を定めています。
これらに対して、アフターサービスの対象は「契約で定める一定の欠陥」であり、契約の不適合に限りません。また、品確法の構造耐力上主要な部分などに限らず、建具や設備なども対象になっていることもあります。アフターサービスの対象と期間はそれぞれの契約によって定められますので、その内容をしっかりと把 握しておきましょう。
契約不適合責任に関する保険制度
※ここで「瑕疵」というのは、改正民法における「種類または品質に関する契約不適合」のことで、民法改正後も、この制度の関係では、瑕疵担保責任という用語は、残ります。
住宅瑕疵担保責任保険とは、新築住宅の売り主である不動産会社などが、住宅瑕疵担保責任保険法人との間で保険契約を締結することで、その住宅に瑕疵が判明した場合に、その補修費用などを保険金によりてん補する制度です。売り主が倒産していて補修が行えない場合などは、買い主が直接、住宅瑕疵担保責任保険法人に瑕疵の補修等にかかる費用(保険金)を請求することができます。
中古住宅の場合に利用できる瑕疵担保責任保険として「既存住宅売買瑕疵保険」があります。この保険は、中古住宅の検査と保証がセットになった保険制度で、住宅の基本的な性能について、専門の建築士による検査に合格することが条件です。売り主である不動産会社または個人が、この保険に加入している場合は、売買された中古住宅に欠陥が見つかった場合でも、補修費用などの保険金が不動産会社や検査機関などの事業者(事業者が倒産等の場合は買い主)に支払われます。
洪水、台風、地震、噴火、津波、火災、白アリなどの虫食い、自然消耗、住宅の不適切な使用によるものは、保険金支払いの対象外です。
住宅瑕疵担保責任保険については「住宅の瑕疵保険」で概要を説明していますが、より詳しい情報については「住まいのあんしん総合支援サイト 」または「住宅瑕疵担保責任保険協会 」のサイトを参照
※掲載情報は【不動産ジャパン】サイトより転記しています。