買うときに知っておきたいこと

相場、物件選び、契約、計画資金、入居後のアフターサービスまで。
不動産を買うときに必要な基礎知識をまとめました。

(8)購入の最終判断をする

8 - 2 重要事項説明のチェックポイント 重要事項説明の流れ

契約前には、必ず行われるのが「重要事項説明」。
購入予定の物件や取引条件に関する重要事項が説明されます。
購入するかどうかの最終的な判断をするためには、その内容を理解することが大切です。

(1)説明を受ける前の基本的な確認

確認のポイント
重要事項説明の説明者が確かに宅地建物取引士であるかをしっかりと確認します。説明者が宅地建物取引士でない場合は、不動産会社が法律に違反していますので注意が必要です。
A 宅地建物取引士の確認

重要事項説明を行う宅地建物取引士は、宅地建物取引士証を提示した上で説明をしなければいけません。説明者が確かに宅地建物取引士であることを、宅地建物取引士証で確認してください。万が一、説明者が宅地建物取引士でない場合は、その不動産会社は法令に違反していますので注意が必要です。

B 取引の態様

法令で義務づけられた説明項目ではありませんが、通常、その不動産会社が、自ら売り主なのか、売り主の代理なのか、媒介(仲介)なのか、といった取引態様の説明があります。

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(2)物件の基本的な確認

確認のポイント
購入しようとする物件をしっかりと特定するとともに、所有権に影響する権利はないか、何らかの権利が設定されている場合は、購入時には解消されるのかなどをしっかりと確認します。こうした確認を怠ると購入後に、自らの利用を制限されることがありますので注意しましょう。
C 物件の概要

物件の所在地や面積などが記載されます。まずは、登記記録(登記簿)等により購入物件をしっかりと特定しましょう。各種税金の軽減措置や、住宅ローンを利用する要件として、物件の登記記録(登記簿)の面積の下限が決められているものがありますので確認が必要です。

D 登記記録(登記簿)に記録された事項

重要事項説明書の記載事項を、登記記録(登記簿)の内容と照らし合わせて確認します。物件に抵当権などの権利が設定されている場合は、その内容についてしっかりと説明を受けることが重要です。

【抵当権、差し押さえなど】
抵当権が設定されている場合は、売り主がその物件を担保に金融機関等から借り入れを行っている場合が多くなっています。通常は、抵当権を抹消することが売 買の前提となります。なお、予定する売買価格と比較して抵当権の設定額が大きい場合、税金の滞納などの理由で差し押さえの登記がなされている場合などは、 売り主の信用力が著しく低下している可能性があります。このような場合、権利関係が確実に整理されることを確認することはもちろんのこと、契約時に支払う 手付金等についても、多額の手付金等を支払わない、何らかの保全措置を講ずるなどの対応が必要な場合もありますので注意しましょう。

【その他の権利】
賃借権が設定されている物件や共有物件などは、所有者の権利や利用が一部制限されます。このような権利についても、購入後にどのような影響があるのかをしっかりと確認しましょう。

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(3)法令上の制限

確認のポイント
無秩序な開発等の防止や、防災等の安全性を確保するために、不動産の利用には、法令により様々な制限が設けられています。極めて多くの法令の制限がありますので、すべての法律を理解することは難しいでしょう。そこでまずは、(1)建物の建築や建て替えの際に、どの用途の建物がどの程度の規模で建築することができるのか、(2)何らかの費用負担が発生することはないかなどをしっかり確認することにしましょう。
E 都市計画法・建築基準法に基づく制限

都市計画法で定められた用途地域や地域地区の種類が記載されています。
用途地域や地域地区を見れば、購入する物件が、一戸建てなどの低層住宅を中心とした地域にあるのか、マンション等の中高層住宅を中心とした地域にあるの か、事務所や商業施設の建築が可能な地域なのか、工場等の建築が可能な地域なのかなど、その地域で建築可能な建物の概要などが分かります。
また、建築基準法では、その地域でどのような用途の建物が、どの程度の規模で建築できるかなど、建物の建築に関する詳細な規制を設けています。
低層住宅を中心とした地域では、建物の用途は低層の住宅にほぼ限定されます。逆に、事務所や商業施設の建築が可能な地域では、建物の用途制限が少なく、高層ビルなどの大規模な建物の建築が可能な地域もあります。

このように都市計画法や建築基準法による制限を確認することで、購入する物件の建物に関する制限や周辺環境の概要を把握しておきましょう。
また、土地と道路の関係は建物の建築に大きな影響を与えます。
一般的には、道路幅員が狭いほど建築可能な建物の規模も小さくなりますので、道路と建物の関係についても十分に確認しましょう。
これ以外にも、建物の高さ制限など、様々な規制がありますので具体的な制限の内容について説明を受けましょう。

<中古物件の場合>
中古物件の場合、建物の建築当時は適法であったとしても、建築後の都市計画の変更などによって、購入時点では法令の規定に適合していないことがあります。 このような物件を「既存不適格物件」といい、違反建築物とはなりませんが、同じ建物を再建築することはできません。また、建築後の増改築などにより、法令 の規定に適合しない違反建築物となっていることもあります。この場合は同じ建物を再建築できないことはもちろんのこと、行政庁から改善等の指導や勧告を受 けることがありますので注意しましょう。

上記以外の法律に基づく制限
その他の法令による制限により、土地の造成などについて行政庁の許可などが必要な場合があります。これ以外にも、様々な法令で不動産の利用等が制限されることがありますので、該当する法令を確認し、具体的にどのような制限がかかるのか説明を受けるようにしましょう。

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(4)道路その他のインフラに関する事項

確認のポイント
道路などの各種インフラは、購入後の物件の利用に大きく影響しますが、すべての物件で当然に利用できるものではありません。(1)各種インフラの利用に何らかの制限はないのか、(2)利用に当たって特別な費用負担はないのかなどを十分に確認することが大切です。
F 私道に関する負担に関する事項

購入予定物件が私道に接している場合は、物件に私道部分が含まれるかどうか、含まれる場合はその面積や位置などを説明してもらいます。私道は、関係者が単 独で所有している場合、関係者で分割して所有している場合、関係者で共有している場合など、権利関係が複雑です。そのため、発生する負担も、維持管理のた めの負担金が必要な場合、道路の掘削等に所有者の承諾が必要な場合、通行料の負担が必要な場合など、物件により様々なので注意が必要です。

G 飲用水・電気・ガスの供給施設及び排水施設の設備状況

飲用水などのインフラの整備状況について説明されます。これらのインフラは生活に不可欠なものですので、その整備状況はしっかりと確認します。また、整備 されている場合でも、何らかの特別な負担金等が発生する場合もありますので、あわせて確認します。なお、飲用水などの設備が未整備の場合は、整備の見込み について説明を受けます。購入後に整備される場合にも、特別の負担が必要となることがありますので注意が必要です。

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(5)その他物件に関する事項

確認のポイント
不動産には様々な制限や留意すべき事項があります。ここに記載した項目に該当するものがある場合には、(1)その内容、(2)物件の利用に関する制限の有無、(3)費用負担の有無、(4)その他の影響などを個別に確認します。
H 完成時の形状・構造(未完成物件の場合)

新築分譲物件で建物が未完成の物件は、契約時に実際の建物を見ることができません。そのため、重要事項説明では、完成時の建物の概要が説明されます。な お、完成後のトラブルを避けるためには、完成後の細かい仕様など、できるだけ具体的な資料を用いて説明を受けることが望ましいでしょう。

I 建物状況調査の結果概要(既存の建物のとき)

購入予定の物件が既存(中古)住宅の場合、宅地建物取引業法の一部改正により平成30年4月1日以降の重要事項説明では、建物の状況調査(国土交通大臣の定める講習を修了した建築士が一定の基準に従って実施するもの)を過去1年以内に実施しているかどうか記載されることとなりました。また、実施している場合には、建物状況調査の結果の概要が説明されます。

J 建物の建築及び維持保全の状況に関する書類の保存状況(既存の建物のとき)

購入予定の物件が既存(中古)住宅の場合、買主が判断するのに重要な影響を与えると考えられる「建物の建築及び維持保全の状況に関する書類」については、平成30年4月1日以降の重要事項説明で、それらの保存状況が説明されます。説明されるのは、一定の書類の有無についてで、その内容についてまで説明されるものではありません。

K 造成宅地防災区域内か否か

造成宅地防災区域は、宅地造成に伴う災害で大きな被害が発生するおそれがあるとして指定される区域です。この区域内の宅地の所有者等は、災害を防ぐための 擁壁の設置や改造などに努めなくてはいけません。また、災害を防ぐための措置が不完全な場合、所有者等は、擁壁の整備等に関して、都道府県知事から勧告や 命令を受けることがあります。

L 災害に関する警戒区域内か否か

土砂災害警戒区域と津波災害警戒区域について、該当するかどうかが説明されます。土砂災害警戒区域は、急傾斜地の崩壊等の災害で大きな被害が発生するおそれがある地域について、一方、津波災害警戒区域は、津波が発生した場合に住民等の生命・身体に危害が生ずるおそれがある地域について、市町村が警戒避難体制を整備すべき区域として指定するものです。物件がこれらの警戒区域内にある場合は、宅地の開発や建物の建築などに制限がありますので、購入予定物件が該当する場合は十分に確認しましょう。

M 石綿(アスベスト)使用調査の有無とその内容

購入しようとする建物について、売り主などが行った石綿使用調査結果の記録の有無が説明されます。かつては、保温断熱の目的で、石綿の吹き付け工事が行わ れていましたが、吹き付けられた石綿は、空中に飛散し人が吸入してしまう可能性があることから、昭和50年に原則として禁止となりました。そのため、特に 昭和50年以前の建物に関して、調査結果の記録がある場合には、その内容を十分に確認しましょう。

N 耐震診断の内容

建物の耐震基準は、昭和56年の法改正によって強化されました。したがって、それ以前に建築確認を受けた建物は、強化される前の「旧耐震基準」に基づいて 建築されたことになります。旧耐震基準に基づき建築された建物で、一定の耐震診断を受けている場合には、その診断結果の内容が説明されますので、耐震診断 の有無と結果について十分に確認しましょう。

O 住宅性能評価を受けた新築住宅である場合

購入予定物件が、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく住宅性能評価を受けている新築住宅である場合は、その旨の説明があります。住宅性能評価 は、住宅の品質や性能について客観的な評価が行われ、その結果が住宅性能評価書として交付されるものです。住宅性能評価は法律に基づいた制度ですので、購 入予定物件の品質等に関する判断材料の一つとなります。

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(6)マンションなど区分所有建物に関する事項

確認のポイント
区分所有建物は、マンションの住戸のように区分所有者の所有権の対象となる「専有部分」、共同の玄関・廊下・エレベーターなど区分所有者全員または一部の 共有となる「共用部分」に分かれるなど、一戸建てと違って権利関係が複雑です。また、駐車場やトランクルームなどについて、特定の区分所有者にのみ使用を 認める「専用使用権」がある場合もあります。区分所有建物は、多数の権利者と共同で物件を管理していく必要があり、管理規約等によって様々なルールが定め られていることが多くなっています。したがって、(1)どのような権利関係にあるのか、(2)建物の利用、管理、修繕などに関してどのようなルールがあるのかなどをしっかりと確認しましょう。
ア 敷地に関する権利の種類及び内容

区分所有建物の敷地面積や権利の種類について説明されます。建物の敷地をしっかりと確認するとともに、敷地全体に所有権があるかどうかを確認しましょう。借地権部分がある場合などは、地代などの負担が発生することがあります。

イ 共用部分に関する規約の定め

共用部分については、管理方法、管理者の選任方法と権限などについて管理規約等で定められていることが一般的です。共用部分は区分所有者の共有となりますので、管理規約等の定めをしっかりと理解した上で入居することが大切です。

ウ 専有部分の用途その他利用の制限に関する規約の定め

専有部分であっても、事務所としての利用、ペット飼育、リフォームなどを禁じるなど、管理規約等で利用方法等を制限している場合があります。単独で所有する専有部分についても、利用の制限がある場合には、しっかりと理解した上で入居することが大切です。

エ 専用使用権に関する規約の定め

専用庭、ルーフバルコニー、駐車場、トランクルームなど、区分所有建物の敷地、共用部分、付属施設等に関して、特定の区分所有者にのみ使用を認める専用使用権が規約等で定められている場合があります。共用部分が当然に使用できない場合もありますので注意が必要です。

オ 修繕積立金や管理費に関する規約の定めなど

区分所有建物は、区分所有者が共同して建物の修繕や管理を行う必要があります。通常は、計画的な修繕や日常の管理に必要な費用について規約で定められてい ます。購入後には必ず負担する費用ですので、事前に確認しましょう。また、中古マンションの場合、計画的修繕のために積み立てられている金額や既に実施さ れた修繕の内容についても説明を受けます。築年の古いマンションで積立額が少ない場合には、必要な修繕が行えない可能性もありますので注意しましょう。ま た、売り主が積立金や管理費等を滞納している場合は、その精算を求められることがあるので確認しておきましょう。

カ 管理の委託先に関する事項

一般的に、区分所有建物の管理は管理会社に委託されています。委託されている場合は、管理会社の概要について説明を受けます。適切にマンションを管理していくためには、管理会社への委託内容とその実施状況が大きなポイントとなります。

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(7)契約条件に関する事項

確認のポイント
契約条件のうち、特に重要な事項について説明を受けます。契約後のトラブルを避けるためにも、契約内容を十分に理解することが大切です。適切な契約条件であるかなど、気になることがあれば納得できるまで確認しましょう。
N 代金及び交換差金以外に授受される金額

手付金、固定資産税や都市計画税の精算金、その他管理費等の精算金など、売買代金以外に授受される金銭について説明されます。精算金等についても十分に確認した上で、売買契約に臨みましょう。

O 契約の解除に関する事項

手付金の放棄による契約解除など、どのような場合に契約を解除できるのか、解除手続きや解除の効果はどうなるのかなどについて説明がされます。契約の解除はトラブルにつながることも多いので、やむを得ない場合にはどのような対応が可能なのかをしっかりと確認します。

P 損害賠償額の予定または違約金に関する事項

契約に違反したときの損害賠償額の予定、または違約金(以下「違約金等」)に関する定めがある場合、金額・内容などが説明されます。一般的には、違約金等 を売買代金の20%以内とすることが多いようですが、最終的には当事者間の合意によります。ただし、宅地建物取引業者が売り主となる場合は、違約金等の合 計額は売買代金の20%以内と規制されています。違約金等をめぐるトラブルは多いことから、契約前にしっかりと確認しておきましょう。

Q 手付金等の保全措置の概要

売り主である宅地建物取引業者が、売買契約時に、(1)完成物件で物件代金の10%または1,000万円を超える手付金等を受け取る場合、(2)未完成物 件で5%または1,000万円を超える手付金等を受け取る場合、のいずれかの場合には、手付金等の保全をしなければなりません。これによって、売り主であ る宅地建物取引業者が万が一倒産した場合などでも、手付金等は買い主に返還されますので、保全措置の方法についてしっかり確認しましょう。

R 支払金または預かり金の保全措置の概要

売買する物件に関して買い主から支払われ、または預かった金銭について、宅地建物取引業者が、保全措置を講じるか否か、講じる場合にはその保全措置の内容 が説明されます。手付金等の保全措置と異なり、保全措置を講ずるか否かは任意となっています。売買契約に当たって、手付金等以外に何らかの金銭を預ける場 合などは、その目的や保全措置の有無について確認しましょう。

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(8)その他の事項

確認のポイント
その他の事項についても、該当する場合には、(1)その内容、(2)購入後の対応、(3)その他の影響について個別に確認しましょう。
S 金銭の貸借のあっせん

宅地建物取引業者が住宅ローンなどの金銭の貸借のあっせんを行う場合には、その住宅ローンの融資先・金利・返済方法などについて説明することになっていま すので、あっせんを受けた住宅ローンなどの内容を確認しましょう。また、予定していた住宅ローンなどが受けられなかった場合の措置についても説明を受けま す。例えば、住宅を購入する場合、買い主の責任によらない理由で、やむを得ず住宅ローンが受けられなかったときに、一般的には、売買契約を無条件で解除す ることができる特約(いわゆる「ローン特約」)が売買契約に付されます。

T 瑕疵担保(かしたんぽ)責任の履行に関する措置

売り主が講ずる瑕疵担保責任の履行に関する措置について説明されます。
瑕疵担保責任の履行に関する措置とは、売り主が倒産などにより、瑕疵担保責任を負うことができない場合でも、保険への加入などにより瑕疵担保責任を履行す るという制度です。平成21年10月1日より、新築住宅の売り主には、瑕疵担保責任の履行に関する措置を講ずることが義務化されました。
*瑕疵担保責任:宅地または建物に、契約の締結当時に隠れた瑕疵(欠陥など)があった場合に、売り主が買い主に対して負う責任のこと。

U 割賦販売に関する事項

購入予定物件が割賦(分割による支払い)で販売される場合に、現金で販売する場合の価格、割賦で販売される価格、引き渡しまでに支払う金額と引き渡し後に 分割して支払う金額とその支払い時期について説明されます。物件を割賦で購入する場合は、支払条件などをめぐってトラブルが発生しやすいので、しっかりと 確認しましょう。

V 供託所などに関する説明

宅地建物取引業者には、営業保証金を供託するか、宅地建物取引業保証協会に加入することが義務づけられています。これは、消費者等が、宅地建物取引業者の 責任により取引上の損害を被った場合に、宅地建物取引業者が供託している営業保証金、または宅地建物取引業保証協会が供託している保証金を還付すること で、消費者等の保護を図ることを目的としています。したがって、宅地建物取引業者が、宅地建物取引業保証協会の会員でない場合は、営業保証金を供託してい る供託所とその所在地について、宅地建物取引業保証協会の会員の場合は、その会員である旨、保証協会の名称、住所及び所在地、保証協会が保証金を供託して いる供託所とその所在地について説明を受けます。

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※掲載情報は【不動産ジャパン】外部サイトへサイトより転記しています。

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